コミュニケーションから開く問題解決への扉
卒業後は化学メーカーの会社に就職します。化学メーカーはものづくりの基盤となる素材からつくり出せるところなので、そこが自分にとっては魅力に思えました。もともとものづくりが好きで、大学も、ものづくりにかかわる6分野から自由に専攻を選べる明星デザインに入学しました。私はグラフィックデザインを専攻して、それは自分に一番合っていたと思います。実際、3年生の始めくらいまではグラフィックデザイナーになりたかったんです。
でも、就職は総合職を希望しました。この4年間、学内外でさまざまなデザインの課題に向き合ってきたなかで、自分が一番やりがいを感じたのは、デザインを求めている方々と、たくさんコミュニケーションを重ねることで、一緒に問題解決をしていく、という経験ができたときでした。社会のなかでもそんな働き方ができたらいいな、と思ったのが総合職を希望した動機です。
まだ入社してからの具体的な配属は決まっていませんが、お客様とのコミュニケーションが図れる広報の仕事ができたらいいな、と思っています。
自分の理想と相手の求めるものは違う?
転機になったのは「企画表現5」。市役所の依頼を受ける、という形で地域活性化に5~6人で1チームになって、グループワークで取り組む授業です。私たちのクラスに課されたのは、立川市のゴミ処理施設「クリーンセンター」の新しいロゴを考える、というテーマ。私たちのグループは、ちょっとおしゃれで洗練されたロゴを制作しました。見た目の完成度にはすごく自信があったものを市役所の方々にプレゼンテーションして、評価も髙かったんですけど、結果、選ばれたのは他のグループが提案した、より親しみやすいものでした。
「クリーンセンター」のロゴマークに求められていたのは、一目見てわかりやすい、誰が見ても親しみやすい、そういうものだったんです。
それからは、積極的に自由参加の課外活動にも参加するようになりました。課外活動では、住民から行政まで、ひろく地域の人たちと関わることが多くなっていきました。
相手のことを思う「デザイン」。理論もコミュニケーションもそのためのもの そんな課外活動で一番記憶に残っているのは、日野市の指定のゴミ袋のデザイン。そのときは、たくさんのひとからいろんな話を聞き、アイデアを出してはまた話を聞いて修正していきました。問題解決のためにはコミュニケーションがすごく必要だという思いが強くなりました。
明星デザインは、授業で学んだことをアウトプットできる機会がたくさんある。だから私は、成長できたな、と思っています。
卒業研究では、ゴミ問題の改善のためにデザインでのアプローチで何ができるか、もう一歩踏み込んで研究をすすめてみました。行政が発信するゴミの分別の情報は少し堅苦しく子どもたちにはわかりにくいものです。そこを無理なく自然に理解に導けるよう、心理学や行動経済学の理論をベースにしたデザインのカルタを作成しました。
明星デザインで学んだ「デザイン」っていうのは、結局、いかに相手を思うか、というものだと思うんです。使い手のことを考えてものをつくる。受け手の気持ちを考えて営業をする。どの職種に就いても、そのプロセスは同じだと思います。