一つのことに真剣になれた学生時代
卒業制作で描いた漫画がアフタヌーン四季賞・佳作を受賞した西巻琢馬さんは、大学を卒業して間もなく、一躍新人漫画家としてプロデビューを果たした。美術大学を舞台にした『ロジック』は、webで1年間連載の後、講談社コミックスから発売。なかなか芽が出ない人も多い漫画業界で、順調なスタートを切っている。 西巻さんは明星大学での4年間に、さまざまな収穫を手にした。学生生活は『ロジック』に描かれたストーリーの土台になり、体験演習の緊張感ある授業では、「まじめにやることの楽しさ」を発見。そして絵画を専攻していた2年生の頃、自分より絵が上手いと思う人に出会い、「もっと上手くなりたい」と向上心にスイッチが入る。もともと描くのが好きだった西巻さんだが、そこから1日6時間ほど、一人暮らしの部屋でひたすら手を動かすことに没頭する。それを2年間休まずに続けた時、「画力が上がり、より写実的に描けるようになった」と実感した。それらがすべて今に活かされ、自信となっている。体調管理も力の配分も、仕事としての責任感から
知り合いに漫画家はいるが、師匠はいない。独学である。 「暗中模索しながら、そのなかで経験則を積み上げて、自分がつくりやすい方法を見つけています」 実は大学3年生の時、漫画家のアシスタントのアルバイトをしたことがある。ところが4日間でクビ。「仕事の意識がなく休憩し過ぎていた」と反省、そこから身を引きしめた。そしてプロデビューして連載が始まった3、4週目、さらに仕事の厳しい洗礼を受ける。無理がたたり39度を超える高熱が出てダウン。何とか締め切りに間に合わせたが、「体調管理の大切さ、責任を実感」することになった。それから仕事は朝10時半から22時半までに集中し、昼・夕・夜の食事はアシスタントと一緒にきっちり摂り、ペース配分もできるようになった。 「漫画にはデザインのすべてが入っている」と西巻さんは考えている。ストーリー、キャラクターの服装や髪形、コマ割り、構成、最適な表現、絵…。セリフの大小も視覚的に重要度を伝えるデザインだし、余白など見やすさにも配慮する。「連載漫画は“こうしたほうがいい”と気づいたら、すぐに反映して表現できる。覚えることがとても多く、どんどん身についていくのを感じていた。連載期間はとにかく勉強の1年間。毎回“描くことは面白いなぁ”と思っていました」 漫画家になるには、とくかく描き飽きないこと。題材についてとことん調べるリサーチ力や、仕事としてストーリーをつないでいく器用さも必要だ。その上で「力をアベレージ85%にセーブして絵を描くこと」だと、西巻さんは続けた。「好きなものを描くことで、個性になるのかなと思います。これからも自分が面白いと思うものを描いていきたい。それを他の人も喜んでくれたらいいですね」profile
にしまき・たくま 1989年、東京都生まれ。明星大学で絵画を専攻、卒業制作で描いた漫画がアフタヌーン四季賞・佳作を受賞したのを機に、アルバイトをしながらプロの漫画家を目指す。2013年、マンガボックスにて『ロジック』を週刊連載。2014年、『ロジック』のコミックブックス(講談社コミックス)が発売された。 @takkun555![](/wp/wp-content/uploads/2018/03/interview2_0301_01.jpg)
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