デザインの考え方を変えた明星デザイン
僕がものづくりの道に進みたいと考えたきっかけは、寄木細工に惹かれたからでした。小さい頃、よく祖父母に箱根に連れて行ってもらって、そこで見たからくり箱が楽しくて楽しくて。それからは木を削って何かをつくったりすることがずっと好きで、高校でもクラフトの授業を専攻していました。デッサンもやったけどそれは苦手で……、大学は受験にデッサンのない明星デザインを選びました。入学後もデッサンを学べるので、もう一度しっかりやったほうがいいと思って。それに説明会で「表面的なデザインだけのデザイナーではいけない」と言われたのが心に刺さって、ここで学んでみようと考えました。
実際、明星デザインでの4年間で、デザインに対する考えは大きく変わりました。高校までは色や形に自分のこだわりを出していくことがデザインだと考えていたんですが、何が求められていて何をつくるのか、さらにはつくって終わりではなくて、そこから次のアプローチを考え、どう発信するのか、そこまでデザインに含まれる。この学部で学んだことはどんな職業にも応用できるってところがあって、どんな場面でも必要なときにその力をいかせる、そういう応用力もついたと思っています。
頑張ったからこそ得られた経験値
でも、ここでの4年間は簡単じゃなかった。入学して最初に度肝を抜かれたのは「企画表現演習1」。社会人にインタビューして、冊子の記事を書くという授業です。いきなりアポイントを取るところから始めなければならなくて、「えっ!」と緊張して、頭真っ白。書いた記事は先生にボコボコにされて書き直して……。死に物狂いで頑張ったことが今も印象に残っています。
入学前から「明星デザインには、他の学校にはない何かがある」と覚悟はしていたけど、授業はどれも重いです。僕の場合、とにかくどうにかしなきゃと必死で、これは何のためとか、必要なことだとか、考える余裕はまったくなかった。とくに辛かったのはプレゼンーション。どの課題も最後はプレゼンが必要で、最初のころはそれが憂鬱で……。適当なことが許されないから、原稿をめっちゃ考えて、練習をめっちゃやって、を毎週毎週繰り返して、少しずつ苦手意識を克服しました。
振り返るとつらいことばっかり思い出しちゃうけど(笑)、明星デザインの授業は座学より自ら行動するアクティブなものが多くて、ここだからこそできた経験がいっぱいあります。今なら、4年間、頑張って本当に良かったと思えます。
木工技術の可能性を提案したい
卒業研究は、原点にかえって寄木細工を取り上げました。伝統工芸を若い人たちにも知ってもらい、使ってもらいたい、という提案です。一例としてサーフィンのフィンを制作しました。もちろん、自分でつくってみたかったというのがモチベ―ションとしてあったので、無垢の木から形を削り出し、模様の部分の寄木細工には5,6種類の木を使いました。出来栄えも評価も良くて、参考作品に選ばれました。
やっぱり自分はものづくりと木が好きなんだな、と。それで、教育施設などのインテリアや什器、機材を国産の木でつくる会社があることを知って応募して、採用が決まりました。入社したら、いちばんやってみたいのは設計です。窓枠などの内装に、寄木細工のような技術を取り入れた提案もできるんじゃないかな、って少し考えています。まだ木についてめちゃくちゃ詳しいわけじゃなくて、これから学んでいくことになると思うので、もちろん不安だらけですけど、楽しみのほうが大きいです。