デザインは、けっこう奥が深い
高校生のときから、インテリアなど、内装の仕事がやりたいと思ってました。ものをつくるのが好きで、自分のつくった家具を誰かが使ってくれるなんていいな、というのが理由ですけど、本音を言っちゃえばインテリアデザイナーって肩書がかっこいいな、くらいの気持ちでした。だから、デッサンの勉強はしていなかったし、そもそも僕は絵が絶望的に下手で。だから、受験に絵の試験がなくて、入学後に基礎から教えてもらえるということで、明星デザインを選びました。
入学してみると、ここで学ぶデザインは、僕が思っていたものづくりとはずいぶん違いました。まずすぐに、「本当のデザインとは?」を考えさせられます。たとえば「橋をつくってほしいと依頼されたら」という話。奇抜な形にしようとか派手な色にしようとだけ考えるのではダメで、良いものをつくるには、その土地のことを知って相手の要望にしっかり応える、という話には大きな感銘を受けました。橋ひとつつくるためには、街の規模、通行量、住民の声、本当にたくさんのことを知る必要があるんです。
人の意見を聞くことからデザインが生まれる
だから企画表現演習では毎回リサーチが必要で、大変でした。僕は人と話すのが苦手で、まして知らない人となんて絶対無理だったんです。演習では駅前でアンケートをとったりしなければならなくて、最初は心が折れそうでした。でも必要だとわかっていたので頑張ってるうちに、いつの間にかできるようになっていました。
卒業研究では、スーパー銭湯でのコミュニティーづくりをテーマにしたんですが、常連さんだけでは意見が偏ると思って、初めてのお客さん、いろんな年代のお客さんなど、たくさんの人に声をかけて意見を集めました。
その銭湯でアルバイトをしていたこともあって、初めのころは内装の変更を提案して「そんなコストはかけられない」と店長に却下されたりしていました。でも明星デザインで学んだことで、新商品の開発、常連さんも楽しめるイベントの企画、というように、だんだん発想が変わっていきました。
大事なのは、お客さんたちがそこでどう楽しんでくれるか、どうくつろいでくれるか。内装や家具はその手段のひとつにすぎない、と気がつきました。
目標は笑顔があふれる「場」
就職の面接も、肩の力を抜いて臨むことができました。僕はワークライフバランスも大事だと考えていて、会社のサークル活動でフットサルをやりたいというような話もしました。へたに飾らず素の自分を出したことがかえって良かったんだと思います。就職は、店舗のディスプレイ、展示場の会場制作などを手がけるその会社に決まりました。
入社後はデザイン設計に希望を出したいと思っています。イメージスケッチを描いたり図面を引いたりする最低限のスキルは身についていると思いますし、何よりコミュニケーションスキルが自分の強みと言えるようになったことが大きい。デザイナーともなればクライアントとの綿密な打ち合わせやチームワークでの意見交換が欠かせません。たとえ僕ひとりでは良いアイデアが出せなくても、どんどんみんなのアイデアを取り入れて、より良いものがつくれれば、それでいいんです。
そしていつか、僕のつくった空間にお客さんの笑い声があふれているといいな、と。プロとしてそんな「場」をつくるが、僕の目標です。