デザイン学部での学びを具体的に知ってもらうため、またこれから就職活動や卒デザイン学部での学びを具体的に知ってもらうため、またこれから就職活動や卒業研究に取り組む後輩への参考として、2021年3月12日、2020年度卒業の4年生3人に「4年生の1年間をどの様に過ごして来たのか」各自の経験を話してもらいました。司会はデザイン学部の武藤努教授です。
連載第4回(最終回):就職先を決める。卒業研究をやり切る
————やたらめったら本を読み漁りました。私のように計画が立てられないタイプにはオススメです。(三富)
————第一志望の会社に行きたい思いがあったから続けられた。卒業研究では主査の先生の励ましで、背中を押してもらえました。(足立)
————いちばん大切にしたかったのは、学生時代最後の自由な時間。そのおかげで、卒業研究のレポートでは徹夜するスケジュールになっちゃいました。(黒崎)
■夏休み中の就職活動と卒業研究の進め方
武藤 後輩に伝授する4年生の過ごし方も、いよいよ夏休みにさしかかってきました。夏休みに入るとゼミもお休みになって、各自自分のペースで卒業研究を進めることになりますが、そこでうまくいったこと、苦労したことを聞かせてもらえますか。
三富 見守ってくれる人がいなくなってしまうのが、苦労したことです。まぁ、自分を律して頑張るべきですが……。私は予定がうまく立てられないタイプなので、やたらめったらいろんな本を読み漁りました。やることがわからなくて何もしないより、何かしら調べてみる、手を動かしてみることで、前に進むやり方もあるのかな。そうやっていっぱい溜め込んでおいて、夏休み明けに先生に相談するやり方は、私のように計画が立てられないタイプの人にはオススメです。
武藤 学校に縛られないで時間が取れる夏休みだからこそ、できることもあるでしょうね。いろんなものが自分の中にあれば、必要な時に取り出すことができる。
足立 僕は、6月に総合職で受けた1社から内定をもらえたので、就職活動にも安心が生まれました。で、第一志望への準備を進めたんですが、内定の承諾期限がその前に切れちゃうこともあって、もうここでやめちゃおうかな、と思ったこともありました。
武藤 そこで「続けるぞ」って思えたきっかけは何だったんですか?
足立 もちろん第一志望の会社に行きたい思いがあったからですが、プラス、卒業研究に良い感触があったから、かな。主査の三本松先生からも「良い考え方だね」と後押ししてもらえて、この卒業研究、絶対いける! って、思えたことですね。
武藤 その後押しで、夏休み中の卒業研究はうまく進んだ?
足立 すんなり、じゃないですね。僕は初め、卒業研究のテーマを「アニメーションのリアリティ」としていたんですが、実写映画のリアリティなのかアニメーションのリアリティなのか漠然としたところがあって、そこで悩んでて、三本松先生と話しながら進む方向を決めていったという感じでした。
武藤 どうしても迷ったら、夏休み中でも先生とコミュニケーションを取って進める、という方法もありかと思います。黒崎さんはどうですか?
黒崎 あとあと後悔するのでオススメはしませんが(笑)、就職活動も卒業研究も残っている中で、それでも私が絶対に大切にしたかったのが、学生生活最後の自分の自由な時間でした。夏にはコロナ禍も少し落ち着いてきたので、就職活動では説明会や面接があり、何度か実際に足を運びました。そのぶん卒業研究がおろそかになって、調査報告書を書く時などは、徹夜で文献を読むようなスケジュールになってしまいました。
武藤 自由な時間を大切に使うのは良いことだけど、スケジュールを立てることは、やっぱり大切だよね。ちゃんとスケジュールを組んで時間が使えれば、徹夜しなくてもよかったかもしれない(笑)。
黒崎 代償は大きかったですね。なので、ちゃんとスケジュールは立てた方がいいと思います。
武藤 足立くんと三富さんは早い段階で内定をもらって、三富さんはそこが就職先になったわけですが、内定後にその企業のことで動く必要はありましたか?
三富 企業からの指示はなかったのですが、私自身ゲームをつくったこともないのにゲーム会社に入ることになって、ほかの人に遅れていると感じました。で、「何かやらなきゃ!」と思い、自分でゲームをつくったり、ゲームの本を読んだりはしました。
武藤 就職後の準備を始めた、ということですね。
■夏休み明けの卒業研究の進め方
武藤 夏休み明けからは、卒業研究の企画内容も具体化して、実際の研究や作品をつくることが始まったと思います。そこで見えてきた課題や、ぶつかった問題などはありましたか?
黒崎 夏休み明けは就職活動も卒業研究も、取り組みが10対10くらいの、どっちももう本当に大変なことになってしまいました。あれもやりたい、これもやりたいを大きくし過ぎて、夏休み中にぜんぜん手をつけてこなかったので、テーマをひとつに絞ることがいちばん辛かった。プラス、夏休み明けから就職活動の不合格ラッシュがわっときて、初めてそこで心が折れかけるというか、もう無理なのかなって気持ちになった時がありました。夏休み中にアルバイト先の不動産会社から内定はもらってたんですが、やっぱり自分のやりたいことはモノづくりだと思う気持ちがポコッとあって、この気持ちを大事にしようと思ってがんばったことが、怒涛の10対10になったきっかけでした。
武藤 就職活動はその人の能力の問題というよりは、その会社との相性、マッチングの問題だと思いますが、それでも不合格をたくさんもらうと気持ちが下がるよね。そんな時、やっぱり自分のやりたいことに立ち戻れたことは、すごく良かった。ただ、卒業研究でやりたいことを絞り込まないまま夏休みが終わってしまったのは、反省すべき重要なポイントですね。これが遅れると、実際の研究や制作を始める時期がどんどん遅れていく。そのために、すごい苦労をしたんだろうなと思います。三富さんは?
三富 夏休み明けは卒業研究に「全振り」できるようになりましたが、今度は自己肯定感を上げるゲームをつくりたいという思いと、その仕組みをどうやってつくったらいいのかが、うまくマッチしなくなってしまいました。夏休み中に自己肯定感の心理学的な仕組みを調べたり、ゲームの特性や構造がちゃんとわかっていれば、ここのところは、もうちょっとすんなりいけたのではないかと思います。あと、他国に比べて日本人の自己肯定感はすごく低いということも、ちゃんと数値で調べていないと、論文を描く時に証拠として使えないな、と思いました。
武藤 やりたいことを自分の中に持っていることはすごく大事なことですが、それをまわりに認めてもらうためにはいろんな証拠、エビデンスが必要ですね。自分のやりたい、つくりたいだけでは独りよがりになりがちです。そうならないために明星デザインでは「企画×表現」を、学んできたのですから、その力を発揮するためにも、事前調査はとても大事になってくるよね。
足立 僕は9月にある第一志望の会社の面接に向けて、ほぼ「全振り」というか、とくに1・2週間前からはそこだけに集中しました。無事受かって、自分としては満点なくらい「やった」って感じの就職活動でした。でもそのゴールの先にある、卒業研究として企画を立てることをまったく考えてませんでした。実際に映像をつくるのか、つくるとしたら実写映像なのかCGなのか、絵を描くのか、それさえ決まってなくて、そこからの卒業研究は、自分的には地獄でした。
武藤 結果、制作ではなく研究に着地させたんですね。いろんな情報があったからこそ、そういうかたちになったと思いますが、やはりテーマをひとつに絞り込む難しさは大きいですね。
■後輩へのアドバイス
武藤 じゃあここで一言ずつ、就職活動や卒業研究をやっていくうえでの、後輩へのアドバイスをいただけますか。
三富 まずは、やりたくないことを後回しにしない、ということですね。ゴールめがけてちゃんと予定を組んで進めた方がいい。これは私への戒めでもあります。あと、先生のアドバイスをちゃんと受け止めて、理解したうえで行動できるといい。私は後になってやっと理解できたことが多くて、その時ちゃんとわかっていれば、もうちょっと早く次の段階に進められたのに、と思うことがよくありました。そんな感じです。みんな、頑張って。
黒崎 私の計画性はダメダメでしたが、やっぱり大事なのは、自分がやりたいことをテーマにすること。興味のあることをメモしておいたのは、すごくよかった。そのうちにやりたいことが大きくなるので、それをちゃんと絞り込む。その時期も計画的に決めないと、最後につらくなっちゃいます。スケジュール管理は大切なことだから、大学時代にちゃんとできれば、卒業後にも役立つと思う。卒業研究は大学生活最後の取り組みなので、後悔はしてほしくない。私も最後の制作はうわっと頑張って、何とか納得できるかたちにもっていけたので、悔いはありません。どっかで必ず、巻き返せる時はあると思います。頑張ってください!
足立 不安な芽はつぶしておくことが大事だと思います。就職活動で緊張したら、落ちると思った方がいい。その緊張がなくなるくらい練習して不安をつぶしておけば、落ちた時にもその理由がわかりやすい。自分の悪い部分をなくして、良いところを伸ばしていってほしいですね。
武藤 三者三様のアドバイスでしたが、共通しているのはスケジューリングの重要性や、十分に力が発揮できるような状況をつくっておく、ということですね。そのために、アイデアが浮かんだ時にメモしておくとか、自分が納得できるまで詰めて考えておくことも、卒業研究や就職活動には役立つと思います。今回は短い時間の座談会でしたが、身をもって就職活動や卒業研究を体験した先輩の話を聞いて、きっと後輩のみんなは、これから自分たちがなる「4年生」が、少し具体的にイメージできたのではないかと思います。どうもありがとうございました。大学で学んだことを生かしながら、これから社会で、思う存分活躍していってください。
(完)