ベンチャー企業のデザイナーとして、
飽くなき成長に挑む
株式会社MAKERS 元木優人さん(リードデザイナー)+林慧亮さん(代表取締役社長)
「だれもが健康に意識を向け、予防が当たり前の世界をつくる」をビジョンとして、サプリメントから器具まで、幅広くフィットネス製品の企画・販売を行う株式会社MAKERSは、2018年に創業した若いベンチャー企業です。2022年に新卒入社した元木優人さんは、明星デザイン在学中のインターンシップ時代から、社内唯一のデザイナーとして、同社が展開する「uFit」のブランディングに参加してきました。現在は、ディレクターの夢に向かって日々研鑽を積んでいます。その楽しさと厳しさを、MAKERSを創業した代表取締役社長・林慧亮さんとともに語り合っていただきます。
ベンチャー企業で働く、夢と覚悟
林社長 弊社は5年前に起業したばかりの会社で、影響力はまだまだ小さいと思いますが、フィットネスを通じてみなさんの健康に寄与する「uFit」というブランドを手掛けています。元木くんにはブランド立ち上げの初期のころから参加してもらっていて、今ではデザイン業務のほぼ全般を任せています。
元木さん 新製品の開発では、ロゴの入れ方やカラーバリエーションの設計など、開発チームと一緒になって、企画の段階から参加しています。製品によっては、パッケージデザインまで手掛けることもあります。どういう人たちに向けて、どのように販売するか、マーケティングの人とも打ち合わせをしながら、ネット販売の窓口となるECサイトもつくります。ビジュアル素材の撮影に向けて、モデルやカメラマンの手配、当日のスケジューリングやディレクションをすべて担って、素材を揃えて、ようやくデザインが始まります。もちろん完成までには社内へのフィードバックを繰り返しますが、デザインに関してはまだまだ未熟だという自覚があるので、ちょっとおびえながら毎日仕事をしています……(笑)。
林社長 元木くんには、大学3年生の終わりころからインターンとして来てもらっていました。それまでは私がディレクションに参加しながら外部のデザイナーに依頼していましたが、デザイナーは、ぜひ社内に入れたいと思っていた。元木くんの第一印象は、「真面目そうな人」でしたね。
元木さん インターンシップ先にベンチャー企業を選んだのは、自分が成長したい、という強い動機があったからです。上からの指示をこなすのではなくて、自分の力で一線で働いてみたかった。でも、インターン先へ就職となると何だか楽をしたような感じで、そこは迷いました。そんなとき林社長に、「ここでのインターンは就活より厳しかったと思うよ」と背中を押してもらえて、入社を決めました。
林社長 ベンチャー企業というと、キラキラした部分ばかりがクローズアップされがちですが、倒産や空中分解してしまう会社もたくさんあって、成功しないことも多い。ですから就職を希望してくれる学生さんたちにも、「甘くはないよ」と言っています。それでもベンチャー企業を選ぶのなら、仕事は与えられるのではなく自分でつくるものだ、というマインドが何より大事だと思います。
元木さん 社員もみんな20代の熱量のある人が多くて、すごく良いチームです。入社時は3人だった社員もどんどん増えて、そのたびにオフィスも拡張し、もう3回も引越ししました。会社の成長とともに、自分のデザインも過去に比べれば良くなっていると感じられる。成長が実感できることは、ここで働く大きな魅力のひとつです。
林社長 いいこと言いますね! 社員の成長とともに会社の成長がある。社員と会社の成長は両輪ですよね。それは、経営者としてすごく意識しています。成長にはチャレンジや試行錯誤が必要です。だから私はよく社員に「意味のある失敗をしよう」と言っています。「失敗してもいいから何をやってもいい」のではなく、「成功を目指してチャレンジした結果なら、失敗も許す」という文化を、社内に醸成したいと思っています。
明星デザインで学んだ土台の上に成長を重ねていく
林社長 元木くんにはインターンのころから、デザインの仕事はある程度なんでも任せました。今だから言えますが、最初はまぁまぁ下手で(笑)、同じ仕事を外部のデザイナーにも依頼して、元木くんのデザインはゴミ箱行き、ということも多かった。それでも任せ続けられたのは、元木くんは伸びる、と思えたからです。とても真面目で素直だし、何よりデザインが好きだという思いが伝わってくる。実際、半年たったころからデザインもいい感じになってきて、1年たつころには、「たまにしかはずさないよね」みたいになってきた。
元木さん 最初は大学で思い描いていたデザインと、実践のデザインとのギャップに苦労しました。明星デザインでは、デザインを「企画×表現」ととらえます。そのための「企画表現演習」という授業が4年間通してあって、ものごとに道筋を立てて組み立てるデザインの考え方を徹底的に学びます。その土台がなかったら、インターン時代に何から手をつけ始めればいいのか、まったくわからなかったかもしれません。
林社長 元木くんは大学で、「デザインとはこういうものだ」ということを学んできたんだな、という感じは受けました。どんな意図でこのデザインを提案するのか、その背景を最初からきちんと説明できた。まだ学生なのにしっかり考えられているな、と思っていました。
元木さん すぐに手を動かすのではなく、対象を調査したり、課題がどこにあるか、より良い解決方法は何か、それをまず考えることは学生時代、すべての授業で厳しく言われていたことでした。社会に出て、その大切さを、身に染みて感じているところですね。
林社長 社内での対話は、数字で論理的に話せるように心掛けています。デザインも同じで、「なんとなく好きだから」のような決め方はしたくない。デザインは当社の製品を求める人に届けるための手段のひとつだと思っています。
元木さん お客さんの立場で考えることが社内に根付いているので、それは明星デザインの考え方と重なります。ただ、直接指導してくれる上司がいないのはめちゃめちゃきついですね(笑)。どうしても困ったときは、今も大学の先生方に相談にのっていただくことがあります。同級生ともよく連絡をとっていて、明星デザインの卒業生はさまざまな分野に就職しているので、将来はそれが財産になるかもしれません。
未来志向の企業でデザインが担うこと
林社長 独自のブランドの確立を目指す弊社にとって、デザインはとても重要です。ブランドの一貫性を確保するためにも、デザインはアウトソーシングではないほうがいい。この4月には新卒でデザイナーが1人入社しますし、来年度も採用を予定しています。
元木さん 後輩や部下とは思わず、パートナーとして切磋琢磨したい。もっとしっかりしなきゃというプレッシャーと同時に、いい意味で刺激になります。
林社長 弊社にデザイン部ができたら、元木くんにはそのトップになってもらいたいと思いますが、そうした部署を置くかどうかは未定です。というのもデザインは、横断的に会社に関わるべき職種だと考えるからです。ひとつの部署に閉じるのではなく、会社全体を支えるポジションになってほしい。会社が独りよがりな商品開発や利潤追求に陥っていないか、正しい方向性を判断して指摘できるのが、デザインの力だと思っています。
元木さん それは僕のやりたいことでもあります。将来はブランドを総合的にディレクションしていきたいというのが、僕の目標です。
林社長 私は、短期的にはまず社員が、ここで働くことを心から楽しめる会社にしたい。それが、ヘルスケアの領域で誰もが知る企業になる長期的な目標につながると思います。そのうえで、社員ひとりひとりには、5年後の自分のビジョンを描いてもらっています。元木くんの課題は、まずクリエイティブの力をしっかりつける、ですね。その先は、1人ではつくりきれないデザインを、チームで実現していく力をつけていってほしいです。
元木さん はい。
林社長 将来的には弊社の事業も多様に展開していく予定なので、それらのデザインを統括してブランディングし、さらには企業全体のコーポレートアイデンティティまでやってくれるような人材に育っていただけたら、本望でございます(笑)。
元木さん 承知しました。いつも実力以上の仕事を任せてもらえて、ありがたいと思っています。でも、もっといっぱい仕事がしたい。今は苦労をする段階だと思っています。人生は一度きりですから。自分が到達できるところまで行ってみたいんです。