「社会で活躍するOB・OGインタヴュー」では、卒業した先輩達が、社会の中で、明星デザインでの学びをどのように活かしているのか?そして、周りの人たちから、どのように見られているのか?その様子を紹介していきます。
大学時代の「つくる」経験と知識から、顧客価値の高い企画提案が生まれる
株式会社ベネッセコーポレーション
山田華穂さん(デジタルマーケティング部)
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北村洋子さん(人財開発部)
「学ぶ」ことを通して、「Benesse=よりよく生きる」ための新しい社会価値の創出にチャレンジし続ける企業、株式会社ベネッセコーポレーション。2018年に明星大学デザイン学部デザイン学科を卒業した山田華穂さんは、デジタルマーケティング部に所属し、こども向け教材の販売促進サイトの運用を担当してきました。入社して4年目を迎えた山田さんは、部署内でも「できる人」という信頼を勝ち得ています。山田さんの採用にも関わった人財開発部の北村洋子さんに、「できる山田さん」の秘密を解剖していただきます。
人当たりは良いのに、軸がしっかりしていて仕事もスピーディー
北村 山田さんはとても笑顔が素敵な人です。人当たりが良くて、誰とでもフレンドリーに接することができる人だな、という第一印象でした。ところがだんだん接していくと、ちゃんと自分の軸がしっかりしていて、いろいろなことにもスピーディーに対応できる、良い意味で意外な面を見せてくれています。
山田 ありがとうございます。
北村 ベネッセの仕事は、もちろんミッションはありますが、何をするかは具体的に決められていません。その点、山田さんはやるべきことに自主的に向かっていく姿勢があり、入社4年目で、その力を十分に発揮できています。それは山田さん自身の資質に加えて、明星大学デザイン学部での学びが大きいと思うんですよね。
山田 大学では、調査・分析して、企画を立て実現するという「ものづくり」のすべての流れを学びました。就職活動では、自分が手を動かしてつくる側になるか、企画を考える仕事に就くか、けっこう悩みました。学生時代を振り返ると、いろんな人たちと力を合わせてひとつのものをつくりあげていくことが楽しかった。その過程のどこで自分の力を生かせていたかというと、やはり企画のところだったと思い、企画ができる会社を選びました。
北村 ベネッセが扱う領域は「教育」ですから、学びたいと思うことやわかりやすさといった抽象的なことをどう具現化してお客様に届けるかが大切になってきます。山田さんはその部分でも、大学で学んできたことが今の仕事につながっているんですね。
山田 はい。どんな人がどんなものを求めているか、「人」を起点に深く考える、というベネッセでの仕事は、私が大学で学んだことと近いと思います。
北村 お客さまのニーズに対応したり、今ある問題の解決を考えることも大事ですが、それだけでは新しい価値は生まれてこない。自分たちで仮説を立てながら、一歩先のより良いものを提案していくことが重要となります。山田さんはそこを大学で鍛錬してきたことがわかりますし、そこが光る。
山田 大学では「何のため?」「誰のため?」と、課題ごとに毎回考えてきました。入社後もそうしていたら、すごく評価してもらえた。それで、ああ、私にもできることがあるなって、自分が培ってきたことに自信が持てました。それが入社して1年目のことでした。
専門性を踏まえた、コミュニケーション能力の高さ
山田 大学でデジタルデザインやWebデザインの科目を履修したことも、今の仕事に生かせていると思います。私は今、こども向け教材の販売促進サイトの運用を担当しています。デザイナーやサイト設計者に依頼をする時も、自分に経験があるので、どういう作業になるのかイメージをして打ち合わせすることができています。
北村 山田さんは、初めからプレゼンテーション能力が高かった。的確な言葉にしたり、図示することは、簡単そうだけど本当に難しい。山田さんはすぐに「こうかな」って、仮の状態でもアウトプットできる力があるというのは、強みですね。
山田 サイトの更新を委託している会社と、社内の関係各部署、合わせて50人ほどの大きなチームになると、「私は好き」「私は好きじゃない」という好みで意見が割れてしまって難しいこともあります。そういう時は個人的な好みじゃなくて、なぜそうなっているのかひとつひとつ説明して、ちゃんと理解してもらうように努めました。
北村 山田さんは、みんなとコミュニケーションを取りながらも、しっかりと自分のやるべき仕事もこなせていますよ。そういうマルチタスクをこなせるというのも、それこそ大学時代に培った力なんだろうなって思います。
山田 そうですね。大学時代も、チームワークでは悩むこともありました。でも社会人になったらもっと多くの関係者と協力しながら仕事を進めるわけですから、もし今、学生たちが課題でつらい思いをしているとしたら、「相手がどういった視点でその意見を出しているのか」客観的に考えてみると、整理がつきやすくなるかと思います。
北村 とにかく、みんな山田さんのことが大好き。それはとても大切なことです。ベネッセでは、以前から在宅ワークと出社の比率を部署ごとに決める「ハイブリッドな働き方」を導入していました。それがこのコロナ禍で、一気にリモートワークが基本になりました。大きなトラブルもなく移行できましたが、とはいえ、オンラインミーティングとなるとニュアンスだけでは伝わらなくて、より細かいコミュニケーションが求められます。
山田 そのあたりは、とくに難しく感じることもなかった。ただ、コミュニケーションの工夫はしています。リモートワークになると、出社して顔を合わせていればわかることも見えなくなってしまうので、「どんな状況?」と頻繁に連絡を取り合ったり、業務に関わらないことでも、なるべくお互いの情報がキャッチアップできるようにしていました。
北村 パソコンのスキルも高いですよね。働き方やスケジュールを全部自分でマネジメントすることもちゃんとできている。
山田 昨年は私が担当するサイトを、コンテンツからデザインまで、すべてリニューアルするという大きな仕事をさせていただきました。完璧なものって簡単にはできないので今も修正しているんですけど、やっとひと段落したなという思いです。これまで頑張ってきたことが全部出せたなって思っています。
失敗も含めて、アウトプットし続けてきた強さがある
山田 今までは、大学で培ったスキルを生かして仕事をしてきました。でも、今回のリニューアルをとおして、私がまったく知らない分野の知識も身につけていくと、できることの領域がより広がると感じました。
北村 デジタルマーケティングの専門性を高めながらも、視野を広く持って事業を引っ張っていってほしい。それから、山田さんはまだ若手ですが、ぜひ後進の育成をしていただきたい。後輩から見て、「山田さんのようになりたい」という背中になってくれるんじゃないかなって期待しています。毎日、事業内容や仕事内容が変化していきますが、その対応にマニュアルはありません。そんな時、できる先輩の背中を見ることがいちばんの学びになりますから。
山田 背中ですか。それは頑張らなければ。
北村 山田さんが入社して1・2年経った頃、「山田さんは活躍しているよ」という話を、上司や部署の同僚からよく聞くようになりました。それも、大学で何度も何度もトライする学びがあったからこそ、と知りました。考えたことは一度アウトプットしてみる。でもそれが、一度でうまくいかないことがあることも知っている。その経験は大きいです。ベネッセでも、いきなり素敵な企画が出せることなんて絶対になくて、厳しくダメ出しされてしまう。でも山田さんはめげないで、じゃあどんどんブラッシュアップしていこう、という回路に入っていける。
山田 「企画表現演習」の授業で学んだことが、やっぱり社会に入ると本当に大事なんだと、身に染みて感じています。「企画表現演習」では、半年間ずっと書くことを訓練したり、調査してデータ集計やアンケートをつくったり、当時はデザイン学部なのにこんなことするの? って思っていましたが、それがどんなに貴重なことだったか、今なら良くわかります。
北村 明星大学でデザインを学んだことは、山田さんの財産ですよね。今はデザイナーであっても、事業の軸を踏まえて組み立てることが求められます。経営にもデザインの考え方が重要になってきているように、領域はボーダレスになっています。ベネッセの教育事業でも、必ずしも教育学的な専門性ではなく、教育に関わることへの興味や「こうしたい」という思いが原動力になります。「企画をやりたい」と希望する学生が増えていますが、まずは自分自身の興味や関心がどこにあるのか、じっくり見つめ直してみてほしいですね。
山田 私もそうでしたから、「企画をやりたい」という気持ちはすごくよくわかります。でも気をつけなければいけないのは、「これが私の成功パターン」という型にはまってしまうことです。たとえ同じ人に向けて発信する情報でも、年月が経てば好みも受け取り方も変わります。ですから、いつもまわりのものへの興味を高めて、どんどんインプットすることを心掛けています。いろいろなものに触れていくということが、学生時代にたくさんできると良いかな、と思います。